揺らぐIFRSの「公正価値評価」「BS重視」 – IFRS 国際会計基準フォーラム
http://www.atmarkit.co.jp/im/fa/serial/re_ifrs/01/01.html

従来の国際会計基準=投資家への情報提供=B/S重視、から、B/S、P/L両方で判断していこうという事になった、という話。

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つまり、単純にいうと、企業が保有している経済的資源がどれだけあるかというBSの財政状態を見れば、企業が現金を生み出す能力を評価できると考えているのである。BSで現金を生み出す能力を表すということは、資産や負債が、いくらの現金を生むのか、という観点で評価されなくてはならない。そこで、市場で売却したらいくらの現金が得られるのかという公正価値評価が重要になるのである。逆にいうと、投資家の意思決定に必要な情報には公正価値で評価されたBSがあれば、ほぼ達成されることになり、PLに表される業績に関する情報はあくまでも補完的なものとして位置付けられているにすぎないのである。

 旧フレームワークでは、企業の現金を生み出す能力とは、財政状態から判断できるものとされていた。これは企業への投資を回収することによって利益を上げようとする投資家の目線によるものであった。それに対して、新フレームワークでは、将来の正味キャッシュ・インフローの見通しは、企業が資源を用いる責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしてきたのかについての情報を基に予測するものとされている。現在の財政状態だけでなく、業績から収益性、キャッシュの受領や支払いの実績などから効率性など、さまざまな観点での評価を総合して予測するものと考えられているのだ。新フレームワークでは、BS、PLなどの情報を総合して、将来の正味キャッシュ・インフローの予測を行う。旧フレームワークでは業績を示すPLは補足的な情報と捉えられていたのに比べ、大きな変化であるといえる。

公正価値評価による評価差額が損益となることで、企業の業績が適切に表されなくなる場合もあるからである。

これからのIFRSはどうなっていくのか

 新フレームワークは、従来のIFRSにあったBS重視のスタンスから、BSだけでなくPLなども重視するという大きな変容を遂げている。この変容による影響はIFRSの各基準書に具体的に表れてくることになる。

現在、もしくはこれからのIFRSをBS重視の観点で理解しようとすると、思わぬ誤解を招いたり、適切な理解ができなかったりすることになるので、注意が必要である。しかし、この変容は日本基準に慣れている私たちにとっては好都合なものかもしれない。新フレームワークは、損益計算を重視する日本基準に近くなったと捉えることもできるからである。これまでよりも、これからのIFRSの方が、むしろ私たちにとっては理解しやすいものとなる可能性がある。

筆者プロフィール
野口由美子(のぐちゆみこ)
中央大学専門職大学院国際会計研究科兼任講師。株式会社イージフ フェロー。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業後、あずさ監査法人勤務。公認会計士。

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